結晶片岩の地山を対象としたアンカー工設計事例

株式会社ウエスコ ○ 伊達裕樹
白岩  学
堀  俊男

論文要旨

 結晶片岩地帯で発生した斜面崩壊に対して、アンカー工を主体とする対策工の設計事例である。地表踏査およびボーリング調査により、アンカーの定着地盤として軟岩以上の岩盤を確認したが、室内岩石試験で得られた一軸圧縮強度はqu=3.92〜88.20MN/m2[40〜900kgf/cm2]と非常にばらついた値となり、軟岩・硬岩領域の区分が困難となった。一軸圧縮強度とRQD値および片理面角度との関係を整理した結果、片理面角度と一軸圧縮強度に相関性があることを確認できた。これにより、地山の片理面角度とアンカー打設角度を考慮した上で、定着地盤としての軟岩・硬岩領域を精度よく区分でき、それぞれの岩盤に対しての周面摩擦抵抗を設定した。この手法でアンカー工を設計した結果、定着地盤を全て軟岩領域として考えた場合に比べて、約4%のアンカー長を削減することができた。このことから、地表踏査および一般的な室内岩石試験を有効に組み合わせて実施することにより、得られた地山の定量的な指標から効果的な岩盤評価が行えたと考える。

キーワード

結晶片岩、一軸圧縮強度、片理面角度、アンカー工設計