第38回 研究発表会論集 要旨 <河川系 18〜21>

18.MIKE-SHEの我が国への適用事例と課題

論文要旨

MIKE-SHEはデンマーク水理研究所(DHI)で開発されたメッシュベースの流域水循環解析モデルであり,水循環素過程を物理的に表現した分布型物理モデルである.また,解析結果の図化やアニメーション機能等,優れたGUI環境を有しており,解析結果の妥当性評価やパラメータの同定作業等を支援するツールに恵まれている.本稿において,このMIKE-SHEを我が国における特徴ある流域(農村部と市街地部が混在した流域,および農村部が卓越している流域の2流域)に適用し検証計算を実施した.その結果,一部に課題は残るが,日単位の河川流量および地下水位の時系列変化,地下水位の面的分布等において一定の再現性を得ることができた.一方,従来から,不飽和帯の側方浸透を考慮していないことに起因する大きな出水や洪水低減部におけるMIKE-SHEの適合性の低さが指摘されてきた.この課題に対し,ドレーンモジュールと呼ばれる追加モジュールを適用することにより,出水時の河川時間流量を貯留関数法と同程度に再現することができた.

キーワード

MIKE-SHE,流域水循環解析,分布型物理モデル,不飽和帯側方浸透,ドレーンモジュール



19.河川堤防の質的整備について

論文要旨

これまで河川堤防の整備は、洪水から国民の生命および財産を守るために、堤防の高さや幅を大きくする「量的整備」を進めてきた。しかし、現在の河川堤防は幾度となく拡築が繰り返され、施工された年代により土の種類や築堤の方法が異なる等、浸透や侵食による破堤の危険性が高い土の構造物である。一方、堤防は洪水から生命や財産を守る重要構造物であり破堤の防止対策は河川整備において最も重要な整備であり、堤防の断面を確保する「量的整備」から、堤防の質を高めて浸透や侵食、地震に対する安全性を確保する「質的整備」に変換することが求められている。本論文では、河川堤防の「浸透」に対する質的整備において、検討断面の選定および解析について報告する。

キーワード

河川堤防の質的整備,緊急堤防補強区間,飽和不飽和非定常浸透流解析



20.非構造格子を用いた平面二次元河床変動計算モデルの開発

論文要旨

ワンドや干潟、河川構造物周り等の局所的な河床変動予測解析手法としてFDS法(流速差分離法)による非構造格子有限体積法を用いた平面二次元河床変動計算モデルの開発を試みた。開発モデルにて取り扱う流砂形態は混合砂を目指すが、まず、掃流砂のみの開発モデルを作成し、山岳部の河川合流部を模した水理模型実験結果(固定床、移動床)を検証材料として用いて流れモデルの有効性を示し、本河床変動モデル(掃流砂)の問題究明を行った。

キーワード

FDS,FVM,非構造格子,河床変動,掃流砂



21.モジュラー型モデリングシステムによる流出モデルのシステム化標準の試み

論文要旨

流出モデルは開発機関によって異なるシステム化手法が採用されている。このため、ユーザーが部分的に新たなモデルを開発し、これを既存モデルと接続して用いようとすると問題が生じる。両者間で整合の取れた接続を行うために、既存モデルの入出力方式や操作方式に合わせて、モデル化、プログラミングを行わなければならないからである。こうした部分を標準化する動きのひとつとして、モジュラー型モデリングシステムの構築が挙げられる。本研究は、既存の分布型流出モデルを、米国地質調査所(USGS)が開発したモジュラー型モデリングシステム上に移植するにあたり、問題点の抽出と、その解決のためのモデル改良方策を提示するものである。

キーワード

モジュラー型モデリングシステム,流出モデル,システム化標準