第38回 研究発表会論集 要旨 <環境系 22〜25>

22.環境的観点による既設堰堤スリット化の優先順序の検討

論文要旨

近年、スリットダムの様々な有効性が指摘されている。整備率向上と同時に下流域への土砂供給を図るといった砂防的な長所に加え、河川環境の連続性確保による生態系保全といった観点からも、スリットダムのメリットは大きい。筆者らは、富山県神通川水系野積川に設置されている23基の砂防堰堤を対象として、「土砂管理」および「生態系保全」の両面から既設砂防堰堤のスリット化を提案し、その候補地の検討を行っている。ここでは、魚類調査・河床調査結果に基づき、生態系保全に着目した「環境的」な観点から既設堰堤スリット化の適地を選定する手順をとりまとめ、それに基づいて行った選定の過程および結果について述べる。

キーワード

砂防,既設堰堤スリット化,魚類,生態系保全



23.琵琶湖の自然再生に関する研究について

論文要旨

琵琶湖では、昭和60年頃以降、流域内の人口増加やほ場整備の進展などから、自然湖岸の人工化や琵琶湖と流入水路および水田との連続性の分断、内湖の消失など人為的な改変が琵琶湖の湖辺域の生物生息環境へ影響をおよぼしてきた。琵琶湖の水陸移行帯(内湖・湿地・水田を含む)の保全・再生に向けて、琵琶湖湖辺域における物理環境や生物環境に関する文献調査や追加調査を行い、琵琶湖の環境に関する情報をとりまとめた環境類型区分図および環境情報図を作成した。そのうえで水陸移行帯の環境機能を評価するとともに多様な環境機能を有するヨシ帯に着目し、ヨシ帯の保全および機能回復に向けた対策について検討を行いとりまとめた。

キーワード

琵琶湖,水陸移行帯,内湖,環境情報図,自然再生,ヨシ帯



24.琵琶湖水辺周辺部における3次元測量

論文要旨

琵琶湖の水位操作は、琵琶湖・淀川流域の治水・利水に重要な役割を担っている。ところが近年、水位操作に伴い環境及び生態系へ与える影響が懸念されている。それらを検討するための基礎資料として、生物の産卵・成育場所である「水ヨシ帯」における琵琶湖の水位変動が影響する範囲の微地形を把握する必要があった。本文書は、その測量方法を検討・提案し、琵琶湖北部(滋賀県高島市新旭町針江地先0.64ku)において実施された@測量作業(基本測量・断面測量・地形測量等)について、及び測量作業によって得られた3次元データを用いて、A現場状況を把握するためのデータ作り、B水位変動が環境及び生態系へ与える影響範囲を示すシュミレーション作りについて述べたものである。

キーワード

数値地形測量,基準点測量,深浅測量,CG,デジタルオルソフォト



25.泥炭腐植土と特殊ナイロン繊維を用いた急傾斜岩盤緑化工法の開発

論文要旨

特殊な植生基盤と養生マットの合併型緑化工法  〜長期間熟成した肥沃な低位泥炭腐植土と地域ごとに地場生産しているバーク堆肥を使い,物理・化学性の安定した植生基盤材を作成し,親水性の高分散ナイロン繊維と混合することで安定して急斜面に植生基盤を吹き付けることが可能となった。更に吹き付け後の表面を養生マットで覆うことにより,急斜面での安定した緑化が実現できるものである。

      

キーワード

環境,景観,岩盤緑化