資料No. 02-1
報告書タイトル 斜面安定対策工の選定,および設計・施工の手引き
委員会名 斜面安定対策工研究委員会
委員長名 西 勝(財団法人建設工学研究所)
活動期間 平成11年4月〜平成14年3月
発行年 平成14年8月1日

報告書目次

第1編 山腹(自然)斜面

1.はじめに
 1.1.自然斜面の定義と分類
 1.2.自然斜面での災害発生形態
2. 落石・岩盤崩壊編
 2.1.落石・岩盤崩壊の発生形態
  2.1.1.落石の発生形態
  2.1.2.岩盤崩壊の発生形態
 2.2.落石・岩盤崩壊の調査
  2.2.1.調査のながれと調査項目
  2.2.2.調査手法
  2.2.3.落石・岩盤崩壊調査の現状と今後
 2.3.落石対策工・岩盤崩壊対策工の種類と選定方法
  2.3.1.対策の基本的な考え方
  2.3.2.落石・岩盤崩壊対策工の分類
  2.3.3.落石対策工・岩盤崩壊対策工の選定
 2.4.落石対策工・岩盤崩壊対策工の設計・施行
  2.4.1.落石運動計算の方法と解説
  2.4.2.岩盤崩壊の解析手法
  2.4.3.設計における問題と課題
  2.4.4.落石・岩盤斜面対策工の維持管理
  2.4.5.近年の傾向と新工法
3. 地すべり・斜面崩壊
 3.1.発生形態
 3.2.斜面崩壊の調査
  3.2.1.調査の着目点(調査内容・調査手法)
  3.2.2.自然斜面の安定性に関する調査
  3.2.3.安定解析手法
 3.3.地すべりの調査
  3.3.1.調査の着目点(調査内容・調査手法)
  3.3.2.空中写真・地形判読
  3.3.3.地すべりの現地調査
  3.3.4.土質・地質調査
  3.3.5.すべり面の把握と挙動計測
  3.3.6.地下水調査
  3.3.7.安定解析手法
 3.4.対策工の種類と選定方法
  3.4.1.地すべり・斜面崩壊対策工の種類と概要
  3.4.2.地すべり・斜面崩壊対策工の選定手順
  3.4.3.各対策工の選定理由(アンケート結果)
  3.4.4.適用すべき基準・指針の紹介
 3.5.対策工の設計・施行
  3.5.1.地すべりと斜面崩壊の相違点
  3.5.2.グラウンドアンカー工
  3.5.3.抑止杭工
  3.5.4.集水井工
  3.5.5.地山補強土工
 3.6.環境への配慮

第2編 切土斜面

1.はじめに
2.安定対策工の選定
 2.1.切土斜面の安定対策工
  2.1.1.のり面保護工
  2.1.2.斜面安定対策工
  2.1.3.斜面安定対策工の概要
 2.2. 安定解析手法
  2.2.1.すべり面形状
  2.2.2.崩壊形態
  2.2.3.委員会アンケート調査結果
 2.3.工法の比較選定
  2.3.1.各対策工法選定手順
  2.3.2.各対策工法選定理由
 2.4.安定対策工の選定
3. 安定対策工の調査
 3.1.調査の着眼点
  3.1.1.概要
  3.1.2.現状把握
 3.2.土質定数等の調査手法
  3.2.1.基本的な調査手法
  3.2.2.簡便的な調査手法
  3.2.3.今後の方向性
 3.3.解析の為の調査
  3.3.1.解析モデルの作成
  3.3.2.構造解析のための調査
4. 安定対策工の設計・施行
 4.1.グラウンドアンカー工
  4.1.1.グラウンドアンカー工の設計手順
  4.1.2.グラウンドアンカー工の設計に関する着目点
  4.1.3.受圧板の設計に関する着目点
  4.1.4.例題によるグラウンドアンカー工の設計検討と留意点
 4.2.切土補強土工法
  4.2.1.切土補強土工の基本的な考え方と設計手順
  4.2.2.切土補強土工の設計に関する着目点
  4.2.3.のり面工の設計
  4.2.4.維持補修
  4.2.5.切土補強土の現状と将来
5. 斜面における限界状態設計法入門
 5.1.背 景
  5.1.1.設計法の変還
  5.1.2.国際的な背景
 5.2.限界状態設計法
  5.2.1.信頼設計法と限界状態設計法
  5.2.2.限界状態
  5.2.3.部分安全係数
  5.2.4.現行設計法との相違点
  5.2.5.現状での課題
  5.2.6.破壊確率と安全率
 5.3.信頼性設計法(レベルU)
  5.3.1.概 説
  5.3.2.簡便法による斜面の安定解析
 5.4.ま と め

第3編 盛土斜面(帯状)

1.はじめに
2. 既設盛土斜面の安定度簡易判定法
 2.1.安定度判定に関する基本的事項
 2.2.簡易判定基準
 2.3.安定度簡易判定にあたっての留意点
3. 降雨による盛土斜面災害と安定対策工法
 3.1.降雨による斜面災害
 3.2.降雨の鉛直浸透による斜面災害と防止・安定対策工法
 3.3.その他の浸透水による斜面災害
 3.4.ま と め
4. 地震時の斜面災害と安定対策工法
 4.1.地震時の斜面災害に関する基本的事項
 4.2.地震時基礎地盤の変形に基づく斜面災害と安定対策工法
 4.3.地震時の安定対策工法
5. その他の盛土斜面対策工法
 5.1.その他盛土の安定問題
 5.2.傾斜地盤における盛土の安定対策工法
 5.3.軟弱地盤における盛土の対策工法
 5.4.カルバートなどの安定性
6. ま と め
7. 施工事例
 7.1.軽量盛土による作業ヤードの計画
 7.2.高盛土における防災計画
 7.3.樋門の設置に伴う堤体基礎の地盤改良
 7.4.流通団地盛土工事

第4編 盛土斜面(面状)

1.はじめに
2. 既設盛土のり面の問題点
 2.1. 盛土のり面の崩壊要因
 2.2. 盛土のり面勾配と安定性検討
 2.3. 安定上問題となる既設盛土のり面
3. 盛土のり面の耐震安定性の検討手法
 3.1. 耐震安定性の検討の必要性
 3.2. 新設盛土のり面における耐震安定性の検討手法
 3.3. 既設盛土のり面における耐震安定性の検討手法
4. 動的解析による盛土のり面の安定性評価
 4.1. 動的解析による耐震設計
 4.2. 動的解析手法
 4.3. 等価線形解析による動的解析
  4.3.1. 等価線形解析による動的解析手法
  4.3.2. 等価線形解析による動的解析事例
  4.3.3. モデル断面による動的解析適用事例
 4.4. 非線形解析による動的解析
  4.4.1. 非線形解析による動的解析手法
  4.4.2. 非線形解析による動的解析事例
  4.4.3. 耐震設計にあたっての留意点
  4.4.4. 液状化層の地震後の沈下量の予測
 4.5. 耐震対策工法
  4.5.1. 液状化対策工法
  4.5.2. サンドコンパクションパイル工法
  4.5.3. 深層混合処理工法
  4.5.4. グランベルドレーン工法
5. む す び

報告書全体概要

 斜面に関する過去の研究委員会ではアンケート調査や事例研究を行い,斜面安定指針,地震時の斜面崩壊・変形の現状と設計手法の課題をまとめてきた。さらに本委員会の前身である斜面の地震防災研究委員会では,兵庫県南部地震後,改訂された技術基準案や指針について,改訂前との比較,盛土地盤の地震応答解析のケーススタディなどを行ってきた。
 しかしながら,実務的なレベルでの斜面安定対策工の選定方法や新しい対策工の適用性などについて部分的な検討しか触れることができなかった。また,豪雨時などには,人家や生活道路に近接する急斜面において斜面崩壊が頻発しており,従来よりもコスト縮減化,自然環境に調和した復旧,緑化,短期施行が可能な工法の検討が望まれるようになってきた。
 これらのことから,委員会では,事例研究,アンケート分析結果などをもとに,安定対策工の対象別に実務的なレベルでの対策工の選定方法,設計方法,調査・解析方法,新しい対策工の適用性および既設のり面の安定性などの詳細な検討を行うことを目的とし,平成11年4月から平成14年3月まで活動を行った。
 研究方法は,斜面安定対策の対象別に,盛土斜面,切土斜面,山腹斜面の3つのワーキンググループに分けて分科会活動を行い,全体委員会で調整する方法で進めてきた。
その成果として,対象別に,対策工の計画に必要な調査方法,解析手法,耐震設計,斜面周辺の環境や経済性,施工性に配慮した対策工の実務的な選定方法などについてまとめ,震災後に改訂された各種の基準や指針を踏まえた斜面安定対策の設計・施行の手引きを作成した。報告書は,個別に独立させた構成でとりまとめた。
 各グループの活動状況の概要,各編をまとめると,
(1) 山腹斜面グループ ・ ・ ・ ・ ・ 第1編担当
 切土斜面や盛土斜面を除く,いわゆる自然斜面を対象とした斜面安定対策工についての研究活動を行い,自然斜面における災害発生形態をその発生メカニズムから,落石と斜面崩壊・地すべりに大きく区分し,それぞれの災害発生形態に応じて適用される対策工について整理,設計事例の収集やアンケート調査を実施することにより,自然斜面における対策工についてまとめた。
(2) 切土斜面グループ ・ ・ ・ ・ ・ 第2編担当
 斜面安定対策工を採用することを前提として,安定勾配が何らかの理由で確保できない場合に採用される代表的な対策工(アンカー・切土補強土・法枠)に着目し,実務的なレベルでの工法選定や適用が可能な方向性を示すことを目的とし,アンケート調査結果を含め,調査から設計・施行までまとめた。
 また,このような指針・仕様書設計と異なり,今後国際的に共通な設計法として採用される性能設計(限界状態設計法)に着目し,例題計算を通じた内容の理解と入門書となるような章を設けた。
(3) 盛土斜面グループ ・ ・ ・ ・ ・ 第3編,第4編担当
 盛土の形状から,面状,線状グループで分科会活動を行った。面状グループでは,宅地,空港等の面的造成盛土に関する斜面安定対策工を研究テーマとし,既設盛土のり面に対して,安定上の問題点をあげ,また,新設・既設のり面の各種機関による耐震安定性の検討手法や設計法の整理を行い,等価線形及び非線形による動的解析事例と耐震対策工法についてまとめた。線状グループでは,盛土斜面の安定に最も重要と考えられる降雨及び地震による要因と安定対策工との関係についてまとめた。特に既設帯状盛土斜面の安定度について鉄道・道路盛土を例として簡易判定法を紹介した。

 また,本委員会は,斜面安定に関わる研究委員会として,斜面安定にはじまり,軟岩斜面,地震防災そして当委員会と,昭和60年4月から,17年にわたり研究活動を行いました。参考として過去の委員会の流れ,成果を紹介しておきます。
(1) 昭和60年4月,「斜面安定委員会」として発足し,2期8年間にわたって研究活動を行った。
 第1期は,昭和60年4月から平成2年3月までの5年間,第2期の委員会活動は,平成2年4月から平成5年3月まで3年間研究活動を実施した。
 研究目的は,建設工事と山地斜面の安定に関する現状把握と将来への技術的展望に関することを行った。
成果品 : 「事例集(その1)」,昭和63年3月
「最近の課題(その2)」,昭和63年3月,植生を中心とした斜面安定対策の最近の課題
「斜面安定問題の現状と対策」,平成5年8月
@ エキスパートシステムを用いた斜面崩壊の危険度診断システムの事例研究
A アンケート調査による近畿地方における地すべり,崩壊地の実態とその解析
B 斜面崩壊に関する文献調査とその解析
C 斜面調査および不安定斜面の対策工に関する新技術の把握と事例研究

(2) 平成5年4月〜平成8年3月までの3年間「軟岩斜面安定委員会」として,活動を行った。
 研究目的は,斜面安定委員会の研究成果を踏まえ,過去に発生した地すべり,斜面崩壊のアンケート調査結果をもとに,軟岩・風化岩を中心にまとめ,斜面安定に関する計画〜調査〜設計〜維持管理に及ぶ一貫した流れに対応できるようなものを作成した。
成果品 : 「近畿地方における斜面安定検討の手引き」,平成8年4月
・ 近畿地方における各種の地質分布と斜面災害の特徴,
・ 崩壊の形態と要因の分析,
・ 調査,試験法,
・ 物性値の検討も含めた斜面の安定検討手法,
・ 斜面安定化工法,
・ 計測による安全管理

(3) 全委員会活動期間中,平成7年1月17日に,兵庫県南部地震が発生し,土木構造物,建築構造物の損壊,六甲山系や淡路島における多くの山腹崩壊や地すべり性崩壊が生じました。
 地震による斜面災害の現状を把握し,地震防災における調査・解析・設計,環境保全を考慮した災害復旧の方法などについて検討することを目的として,平成8年4月〜平成11年3月まで「斜面の地震防災研究委員会」として活動を行った。
成果品 : 「地震時の斜面崩壊・変形の現状と設計手法の課題」,平成11年4月
第1編 斜面の地震災害の概要
第2編 山腹斜面の崩壊特徴と対策工 (緑化工)
第3編 大規模崩壊と地すべり
第4編 切土斜面の地震時の崩壊特徴と対策工の選定
第5編 堤体盛土斜面 (帯状) の崩壊・変形特徴と対策工
第6編 宅地造成斜面 (面状) の崩壊・変形特徴と対策工
巻末資料 技術施工基準 (地震改訂版)

 本報告書を含め,これらの報告書が斜面安定の検討に従事する技術者の手助けとなり,今後の防災事業に役立てば幸甚の至りである。


平成14年4月

斜面安定対策工研究委員会         委員長   西  勝

委員名簿

No. 所属名 氏名
1 (神戸大学名誉教授) 西 勝
2 (神戸大学名誉教授) 尾崎 叡司
3 神戸大学 沖村 孝
4 (京都大学名誉教授) 小橋 澄治
5 (大阪工業大学名誉教授) 藤田 崇
6 神戸大学 吉田 信之
7 (株)淺沼組 佐藤 修
8 アジア航測(株) 船越 和也
9 (株)アーステック東洋 丸木 義文
10 (株)エース 名倉 弘幸
11 (株)応用地学研究所 大野 克己
12 応用地質(株) 南部 光広
13 (株)オオバ 下角 喜由
14 岡三リビック(株) 伊藤 孝典
15 (株)奥村組 中野 秀和
16 (株)オリエンタルコンサルタンツ 藤井 弘一
17 川崎地質(株) 池尻 勝俊
18 (株)かんこう 大前 雄史
19 (株)関西土木技術センター 金村 英明
20 (株)キクチコンサルタント 中澤 英之
21 協和設計(株) 綿貫 功一
22 近畿技術コンサルタンツ(株) 桧山 悦一
23 (株)熊谷組 八朝 秀晃
24 (株)建設技術研究所 山脇 真二
25 (株)鴻池組 國富 和眞
26 国際航業(株) 新本 圭一
27 国際航業(株) 伊藤 雅之
28 サンコーコンサルタント(株) 辻野 裕之
29 (株)修成建設コンサルタント 村上 忠之
30 (株)相建エンジニアリング 木越 正司
31 大成建設(株) 伊藤 春二
32 大日本コンサルタント(株) 山下 寛
33 (株)ダイヤコンサルタント 田村 泰志
34 (有)デルタ設計コンサルタント 福田 雅
35 中央復権コンサルタンツ(株) 金村 和生
36 中央復権コンサルタンツ(株) 岡本 勝
37 (株)東京建設コンサルタント 西田 亨
38 内外エンジニアリング(株) 中島 和登
39 日開技研(株) 中屋敷 浩久
40 日本技術開発(株) 坂井 清貴
41 日本建設コンサルタント(株) 藤巴 太郎
42 日本工営(株) 小野 愼吾
43 (株)日本パブリック 亀田 泰範
44 (株)ニュージェック 中野 歩
45 (株)ニュージェック 脇本 公朋
46 パシフィックコンサルタンツ(株) 東郷 智
47 (株)阪神コンサルタンツ 藤村 等
48 ヒロセ(株) 渡邊 恵二
49 不動建設(株) 橋本 則之
50 明治コンサルタント(株) 青木 聡
(株)オーテック 新原 保治
梶谷エンジニア(株) 新 邦夫
基礎地盤コンサルタンツ(株) 大平 耕司
復権調査設計(株) 木原 智晴