資料No.

513-106

報告書タイトル

近畿地方における斜面安定検討の手引き −軟岩・風化岩を中心として−

委員会名

軟岩斜面の安定研究委員会

委員長名

西 勝(神戸大学 工学部 土地造成工学研究施設)

活動期間

平成5年4月〜平成8年3月

発行年

平成8年7月1日

報告書目次

第1章 まえがき
第2章 近畿地方における地質の分布と特徴
 2.1. 第三紀層
   2.1.1. 日本海側地域
   2.1.2. 近畿中央部
   2.1.3. 太平洋側地域
 2.2. 中古生層
   2.2.1. 丹波帯
   2.2.2. 三波川帯
   2.2.3. 和泉帯
   2.2 4. 舞鶴帯
 2 3. 花崗岩類
   2.3.1 山陰帯 
   2.3.2 山陽帯
   2.3.3. 領家帯
   2.3.4. 四万十帯
第3章 崩壊の形態と崩壊に関する要因の分析
 3 .1 斜面の崩壊形態
   3.1.1. 崩壊形態の一般的分類
   3.1.2. 各地質別の崩壊形態と規模の特徴
 3.2. 崩壊に関する要因
   3.2.1. 崩壊要因の一般的特徴
   3.2.2. 各地質別の要因分析
 3.3. 兵庫県南部地震による山地崩壊の特徴
   3 3.1. はじめに
   3.3.2. 現地踏査から見た山腹斜面崩壊の特徴
   3.3.3. 山腹斜面崩壊の分布
   3.3 4. 山腹斜面崩壊面積および土量
   3.3.5. 山腹斜面崩壊の方位分布
   3.3.6. 山腹斜面崩壊発生位置の局所地形量
   3.3.7. 崩壊発生斜面の降雨による影響
   3.3.8. 六甲山系の地下水場の変化
第4章 調査・試験法
 4.1. 調査・試験項目
 4.2. 調査・試験のポイント
   4.2.1. 資料調査のポイント
   4.2.2. 概査のポイント
   4.2.3. 精査のポイント
第5章 斜面の安定検討手法
 5.1. 概説
 5.2. 解析手法
   5.2.1. 解析手法の種類
   5.2.2. 各種解析手法による比較
   5.2.3. アンケート調査結果の検討
 5.3. 物性値の評価
   5.3.1. 第三紀層
   5.3.2. 中古生層
   5,3.3. 花南岩類・
   5.3.4. 各層の物性値のまとめ
 5.4. 解析上の留意点
第6章 斜面安定化工法・
 6.1. 概説・
 6.2. 工法の概要・
   6.2.1. 地すべり対策工
   6.2.2. 斜面崩壊対策工
 6.3. 崩壊要素と対策工のかかわり
   6.3.1. 地質と対策工・
   6.3.2. 災害規模と対策工
   6.3.3. 地形と対策工・
   6.3.4. 崩壊土塊の地質区分と対策工
   6.3.5. 地質構造と対策工
6.4. 近畿地方における地すべり,斜面崩壊対策工の適用性
第7章 計測による安全管理
 7.1. 計測手法
 7.2. 管理基準値
 7.3. 計測頻度および計測期間・
 7.4. 計測計器の維持管理
第8章 あとがき
巻末資料:文献リスト

報告書全体概要

 斜面安定の問題については,地質・土質・地下水などの地盤条件と降雨,地震動などの外的条件が複雑に絡みあっているため,画一的には取り扱えない面が強い。このため,学会や協会ならびに各種機関で出されている設計指針なども幅を持ったものにならざるを得ず,個々の斜面については経験豊かな技術者の判断に委ねられているのが現状である。特に軟岩・風化岩については,切土後の強度低下が著しいということがあるとともに,地層の走向・傾斜や割れ目の状態によって斜面の安定度が大きく左右されるため,その取り扱いがむずかしい。このことは,斜面安定問題が自然条件に左右される限り,今後も変わらないと思われるが,若手技術者にとって,近畿地方の地質に即した具体的な検討の手引きができれば,斜面安定問題を解決する上で,有力な手がかりになると思われる。このことより,本委員会では,過去に発生した地すべり,斜面崩壊のアンケート調査結果をもとに,軟岩・風化岩を中心として,「近畿地方における斜面安定検討の手引き」を作成するべく,鋭意研究を進めてきた。本報告書はこれらの研究成果を取りまとめたものであり,個々の地質毎にできるだけ平易に,かつ具体的に記述するように心がけた。
  本委員会で収集したアンケート数は,前任の委員会からの分も合わせると約400件にのぼっている。既往文献等においては,実際に崩壊した斜面から逆算法で求めた土塊強度などを集大成したものは少なく,今回のアンケートから得られたデータは貴重なものである。アンケートでは一応地すべりと斜面崩壊とに分けて,データを収集したが,ここで取り扱っている地すべりとは,過去から繰り返し起こっている大規模な地すべりとは異なり,自然斜面や切土斜面において降雨時等に発生したものを主体としている。このため,地すべりと斜面崩壊の区別は判然としない面が強いが,大別すると動きが比較的緩慢で,土塊の撹乱のないものを地すべり,動きが激しく,土塊の撹乱の程度の激しいものを斜面崩壊とした。データの分析にあたっては,軟岩・風化岩(土砂状に風化しているものも含む)に関するものを中心として進めたが,一部には崖錐・崩積土に関するものも含んでいる。
 委員会ではアンケート調査と合わせてl980年以降の各種文献を収集・整理した。収集した文献数は約800件にのぼり,必要に応じて各種文献で示されている知見や事例を取り入れて,報告書の内容を幅の広いものにするように心がけた。これらの文献については,委員会で分担して内容を把握し,9項目の大分類とそれぞれの中での細分類に分類し,それをコンピューターに打ち込んで文献を検索できるようにした。これら文献については,一般の方々も利用しやすいように,本書の巻末に文献リストの一覧表と文献の分類区分を資料として添付した。
 本委員会の活動期間としては平成5年4月〜平成8年3月の3年間であるが,前任の委員会から数えると11年の長きにわたっている。本報告書は,これら前任の委員会の研究成果を踏まえて作成したものであり,内容としては,2章で近畿地方における各種の地質分布と斜面災害の特徴を述べ,3章では崩壊の形態と要因の分析,4章では調査・試験法,5章では物性値の検討も含めた斜面の安定検討手法,6章では斜面安定化工法,7章では計測による安全管理について述べることとし,斜面安定に関しての計画〜調査〜設計〜維持管理に及ぶ一貫した流れに対応できるようなものを目指した。
 本報告書が斜面安定の検討に従事する技術者の手助けとなり,各種事業における災害防除に役立てば幸甚の至りである。

委員名簿

No.

所     属     名

氏名

1

神戸大学 工学部 土地造成工学研究施設

西  勝

2

無所属(神戸大学名誉教授)

尾崎 叡司

3

神戸大学 工学部 土地造成工学研究施設

沖村 孝

4

京都大学 農学部 砂防研究室

小橋 澄治

5

大阪工業大学 工学部 地学研究室

藤田  崇

6

潟Aイテック

寺田 良昭

7

叶沼組 大阪本店 土木技術部

丹田 雄次郎

8

アジア航測梶@関西コンサルタント部

國眼  定

9

潟Eエスコ 豊岡支店 技術部

金子 義信

10

渇棊p地学研究所 地質部

大野 克己

11

応用地質梶@関西事業本部 設計部

南部 光広

12

潟Iオバ 大阪支店 設計部

辻  計

13

渇恆コ組 関西支社 土木部

田川 朋尚

14

潟Iリエンタルコンサルタンツ 関西支社

藤井 弘一

15

梶谷エンジニア梶@関西支店 調査部

岡本 成夫

16

川崎地質梶@神戸支店 技術グループ

池尻 勝俊

17

鰍ゥんこう コンサルタント事業所土木設計室

安藤 増実

18

基礎地盤コンサルタンツ梶@大阪支社 技術部

小松  豊

19

近畿技術コンサルタンツ梶@道路・道路U部

桧山 悦―

20

褐嚼ン技術研究所 大阪支社 水工本部地質部

藤井  映

21

轄ヲr組 技術研究所 土木技術部

山本 俊夫

22

国際航業梶@関西技術所 地質部地質課

伊藤 雅之

23

国際航業梶@関西技術所 コンサルタント部

田尻  誠

24

サンコーコンサルタント梶@大阪支店 地質部

矢野 哲太郎

25

大成建設梶@大阪支店 土木部

大竹 明朗

26

潟_イヤコンサルタント 大阪支店

荒木 繁幸

27

中央開発梶@大阪事業部 調査部

大鹿 明文

28

中央復建コンサルタンツ梶@調査技術部

市川 千尋

29

鞄y質工学研究所 技術部 新大阪分室

福田  雅

30

日開技研梶@技術部

松田 勝己

31

日本技術開発梶@大阪支社

坂井 清貴

32

日本建設コンサルタント梶@大阪支社

木越 正司

33

日本工営梶@広島支店 技術部

高木 光雄

34

鞄本パブリック 関西支社 技術部

亀田 泰範

35

鞄ュージェッグ 技術開発部

岩垣 孝一

36

パシフイックコンサルタンツ梶@大阪本社

森野 善広

37

轄辮_コンサルタンツ 奈良支店 調査部

藤村  等

38

ヒロセ梶@補強土事業部

妻鹿  誠

39

復建調査設計梶@大阪支社 地質調査課

吉村 辰朗

40

明治コンサルタント梶@大阪支店 技術課

吉水  吾