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社会に開かれた、魅力ある建設コンサルタントをわかりやすく紹介し、親しみを感じてもらえるように、発刊をしています。

第31号(2020.10.10.発行)「変わる」新しい日常と社会資本

「新型コロナウイルス」… 今年の春ごろから、この言葉を見たり聞いたりしない日はありません。報道でも毎日のように取り上げられ、世界中の感染状況が報告されました。
報道が始まった頃は、全世界にこれほど大きな影響を与えるとは想像できませんでしたが、目に見えない恐怖となったウイルスの感染が拡大するにつれ、私たちの生活は一変しました。感染を防ぐため、まずは人と接触しないことを前提とした生活を強いられ、仕事や余暇の過ごし方のほか、学校教育や人生のイベントである卒業式、入学式、結婚式などへも影響を及ぼしました。この影響はこれからもしばらく続きそうです。
建設コンサルタントの働き方にも大きな変化がありました。協議や説明が重要な建設コンサルタントの業務ですが、人との接触を抑えるため、在宅勤務、移動や出張の制限、リモート会議などを積極的に取り入れました。なれない働き方に戸惑いも見られますが、これを機に働き方改革を目指す企業もあります。
「元の生活には戻れない」「今後はコロナとの共生が必要」とも報じられる中、コロナウイルスは今後の社会資本整備の在り方にも影響を与えるのでしょうか。その問いかけに対し、多くの人が何かが変わる…何かを変えなければならない…と漠然と感じているものの、具体的な答えは見いだせていないのではないでしょうか。
今号の記事でも、執筆者が執筆内容についてコロナ禍での視点で問いかけているものがいくつかあります。コロナウイルスと共生していくための社会資本整備について、皆さんも考えてみてはいかがでしょうか。

第30号(2019.10.20.発行)社会資本は時代を捉え、未来を拓く

高度経済成長期には、私たちの生活は社会資本整備が進むにつれ安全で、快適で、便利なものに急速に変化しました。初期の段階では、整備に伴う自然破壊や水質汚濁のほか急速なモータリゼーションの進展もあいまって、騒音、振動、大気汚染などの環境問題も発生しましたが、その後は環境への影響にも十分に配慮しつつ社会資本整備を進めてきています。
しかし、整備の量的な充足が見え始めた頃、新たな課題に気づきます。安全性や効率性を優先させるがあまり、生活における自然とのかかわりが希薄になったのではないか。かつての自然とのかかわりを取り戻してこそ本当の豊かさであり、成熟した社会ではないかと。
また近年、寿命を迎えようとしている社会資本の機能や安全性の維持・向上に向けて多くの施設更新が必要な状況ですが、建設当時とは大きく異なる条件下での施工が求められています。
道路や鉄道などは機能を止めることなく、都市化に伴い周辺に施設が張り付いた狭小空間での施工が課題となっています。さらには、海洋プラスチックという世界規模での新たな問題にも立ち向かわなければなりません。
このように、社会資本整備を取り巻く状況や課題は生き物のように刻々と変化しており、また、かつてのように官公庁が予算を確保し整備するだけで解決できるものではなくなりつつあります。
今号では、近年における社会資本整備をとりまく課題と解決に向けた取り組みについて、関西の事例を通して紹介します。
これからの社会資本整備は、官民連携に加え、整備の恩恵を受ける私たち一人一人も協力しながら「時代を捉え」「未来を拓く」時代ではないでしょうか。

第29号(2018.10.20.発行) 多様化する道路の普及を目指して

私たちの生活における「移動」に欠かせない社会資本として「道(道路)」があります。太古の昔、人が移動の際に草木を踏んだり倒したりしてできた道や、けもの道が始まりといわれていますが、その後の生活の変化に合わせて進化し、高度経済成長期には、より多くの人や物がより早く確実に移動できるよう、車の流通を主眼に多くの道路が整備されました 。その結果、概ね国土全体に高速道路がいきわたりましたが、それでも都市圏では慢性的な渋滞の発生個所があり、ボトルネック解消に向け更なる整備が行われています。
一方、近年は自転車道といった、車両と分離され安全にレクリエーション・健康づくりなどができる道路も普及しつつあります。また、車道をあえて歩道化し、人々の交流や憩いの場として、あるいは新しい街の顔として再整備する構想などもあります。
今号では、このように目的が多様化しつつある最近の道路づくりにおける、近畿でのトピックをご紹介します。
また、新たなシリーズとして「大学研究室訪問」を開始します。建設業界の将来を担う学生さん達が、何をめざし、何を学んでいるのかを知る一助となれば幸いです。

第28号(2017.10.20.発行) 力を合わせて、より良い社会へ

戦後の公共施設整備は、量的な充足を目的に、官公庁が事業の計画・実施から維持管理まで行なうことを基本としてきました。
しかし、整備が進み生活水準が豊かになるにつれ、国民の生活や価値観に変化が生じると共に、近年にみられる外国人旅行者の増大なども相まって、公共施設に対するニーズが多様化し、より一層きめ細やかなサービスが求められています。
また、慢性的な財政不足の状況の下、少ない費用で大きな効果を上げ、持続的な維持管理ができる経営的な視点が求められています。「経営的視点」は、利益確保を目指している民間企業にとっては、十分に能力発揮できる分野でしょう。公共事業にも、経営力、技術力の優れた民間企業と官公庁が連携し、双方が受益できる仕組みが求められる時代だといえます。
これまでの公共施設整備では、民間企業は官公庁からの仕事を受ける立場でしたが、今後は経営的視点に立った事業の仕組みづくりから、施設の維持管理まで、幅広い民間の参画が求められます。また、官公庁にも民間企業の協力・参画を受け入れる体制づくりが必要でしょう。
今号の記事でも取り上げましたが、すでに公共施設整備における民間企業の参画が始まっています。
今後、より便利で快適な生活に向け、「利用者ファースト」の視点を重視した官公庁と民間企業の協力・連携が進むことに期待が高まります。

第27号(2016.10.20.発行) より早くより多くより長く...

これまで日本の土木技術が取り組んできた大きな目標であり、戦後「がむしゃら」に目標を達成することで、利便性の向上や経済成長に大きく貢献してきたことは間違いありません。
しかし、数年前から危惧されている環境問題により、これまでの取り組みを「一歩立ち止まり見つめる」時間を与えられたことも事実でしょう。
さらには、近年「ワークライフバランス」など、これまでの取り組み姿勢を「見直す」キーワードが聞かれるようになりました。社会資本の量的な充足が達成された今、より豊かな「日本」をめざした発想の転換が求められていることを実感します。今号では「京都四条通」「労働環境」の記事で、「発想の転換」に少し触れてみました。
ただ、発想の転換と簡単に言っても、これまで以上に労力がかかることもあり、また結果次第では責任も生じる事でしょう。より一層豊かな「日本」を目指すため、これからの土木技術には、これまで以上の「覚悟」を伴った発想の転換が必要とされるかもしれません。