地下水位変動と地すべり滑動に関する一考察

株式会社 エイトコンサルタント ○ 藤原 康正

論文要旨

 地すべり地の斜面安定解析に用いる地下水位の設定法には、@観測期間中の最高水位とする場合1)と、A地すべり滑動開始時の水位とする場合2)がある。@の場合には地すべり移動状況にあわせ、斜面の安全率を0.95〜1.00程度に設定し、Aの場合には斜面の安全率を1.00として解析がなされる。長期的な観測が実施されている地すべり地においては、通常Aの手法が用いられるが、継続的な地すべり滑動が認められる場合、Aの地すべり滑動開始時の水位(臨界水位)の設定が困難な場合がある。
 今回、継続的な地すべり滑動が認められ、臨界水位の設定が困難な第三紀層地すべりを例とし、地下水降下時の水位変動と地盤伸縮計の変動遠度の低下に着目し、双曲線法により求めた最終低下水位を用いた斜面安定解析を試みた。この結果、水位変動、地盤伸縮計変動と斜面の安全率に妥当な関係が得られた。この手法は、活発な地すべり滑動が継続している場合のほか、地下水排除効果の評価にも用いることが可能と考えられる。

キーワード

地下水位,地すべり滑動,安全率,地盤伸縮計