第38回 研究発表会論集 要旨 <土質系 13〜17>

13.地上リモートセンシングによる岩斜面の安定性評価

論文要旨

地上リモートセンシングで斜面の安定性を評価する方法を開発した。多くの岩石は風化による水酸化鉄鉱物の増加などに伴って黄色化するため,岩斜面の黄色化の程度("b* 値"と称する)は岩石の風化程度を表す。岩斜面のき裂が多いほど水分を多く貯留し, 表面温度が上がりにくくなるので, 斜面表面の温度の上がりやすさ("RIT比"と称する)はき裂の量に関係する。本手法は地上リモートセンシングで岩斜面表面のb*値とRIT 比を面的に観測する。多数の実際の斜面での研究により,岩斜面の緩みの程度を表す弾性波速度とb*値,RIT 比に明確な相関関係があることが分かった。計測したb*値とRIT 比から, 弾性波速度を測定せずに斜面表層付近の弾性波速度を推定する方法を確立した。推定した弾性波速度を用いて、斜面表層各部分の安定性を評価する。岩斜面の安定性を客観的, 定量的に評価し,分かりやすく表現(記録) できることが本手法の利点である。本論文では手法の概要と, 本手法で不安定とした部分が実際に崩壊した事例を報告する。

キーワード

リモートセンシング,推定弾性波速度,斜面安定,維持管理,施工管理



14.更生下水道管(二層構造管)の挙動に関する調査と設計法の提案

論文要旨

更生管は,既設管と内巻きライナーの分担外力の考え方によって,自立管,複合管,二層構造管の3通りに分けられる。このうち二層構造管の設計は,既設管の強度を期待することにより内巻きライナーの厚さを薄くすることが可能で,流下断面の縮小が少なく,コスト縮減が期待できる。ここでは,二層構造管における既設管の劣化による剛性低下や,輪荷重や地震力,近傍掘削などの外力が作用した場合の安全性を,集中線荷重載荷実験,輪荷重載荷実験,近傍掘削実験,動的遠心模型実験により確認した。次に,二層構造管の設計ツールとして,JSWAS K-16で採用されているバックリング式によって更生材の管厚を算出し,更生材の圧縮弾性係数と管径,埋設深さから更生材の必要管厚が容易に決定できる設計図表を提案した。

キーワード

二層構造管,更生工法,実規模実験,設計,コスト縮減



15.河川堤防を対象とした不飽和土層における透水試験に関する一考察

論文要旨

本論文は締め固めた不飽和地盤の透水係数を計測する方法として、JGS1316-2003に規定されているマリオットサイフォンを用いた「締め固めた地盤の透水試験」を河川堤防に適用した結果を示し、その試験結果について他の透水試験結果と比較検討したものである。この締め固めた地盤の透水試験の実施にあたっては、各地盤特性(透水性の相異)が対応できるように、鋼製で補助タンクの取付が可能な試験機を作成した。なお、この試験機は自動データ収録が行える。比較検討は、粘性土地盤,砂礫地盤,砂混じり粘土地盤における試験を行い、室内試験や原位置における注水法による透水試験結果を用いた。これら比較検討より、河川堤防を対象とした浸透挙動の把握を目的とした解析的検討における各地盤特性に対応する透水試験方法の適用性に関する考察を行った。

キーワード

河川堤防,不飽和土,透水試験



16.盛土崩壊メカニズムの推定

論文要旨

2004年9月29日,台風21号の大雨で谷埋め盛土が崩壊した。崩壊した土砂は流動化が著しく,崩壊の原因に水が作用したことは明らかである。しかし,この盛土にはあらかじめ盛土を囲むようにU字溝,各小段には排水溝,盛土と原地盤との境界には地下排水溝と,表流水や浸透水に対する対策はあらかじめ採られていた。そこで,原因について,1.盛土材の問題,2.想定以上の降雨の有無,3.外部からの水の流入,という観点から迫った。ここにその過程を報告する。

キーワード

大雨,谷埋め盛土,崩壊



17.住宅開発における斜面防災検討および対策

論文要旨

本論は、民間デベロッパーが姫路市広畑区京見町で行った『京見地区住宅開発事業』において、開発区域外の斜面の安定性評価と防災対策の策定について述べたものである。開発区域外であっても住宅地に隣接した斜面崩壊や土石流の発生は、住宅地の安全に直結するものである。このため、住宅地後背自然斜面の安定性の評価を行うとともに必要箇所については、対策工を検討、実施した。なお、この事業は、斜面安定性の評価、検討を行う過程で、委員会を設置していただき学識経験者および行政のご助言、ご指導を頂きながら斜面防災について対策工をまとめて行くことができた事例である。

キーワード

斜面防災,自然斜面,斜面安定解析,防災対策工